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【2024/04/29 13:16 】 |
記憶
 じぱんぐ国立軍事病院
 
そこには、傷ついた大勢の武者達が運び込まれていました。
 
 
――ほら、じっとして。ジュドウ
――痛つっ・・・姫様の医術を使えば、きっと妖魔共も裸足で逃げ出しまする
 
隻眼の初老の武者は言いました。
 
 
――ぷー、そんなことを言うならもう手当てしてあげないんだから
 
桜色の髪をした幼い少女はふくれっ面で返しました。
 
 
 
――はっはっは。姫様にかかってはこのジュドウも形無しにござりまする
 
侍大将の軍章を揺らしながら、武者は傷だらけの顔をほころばせました。
 
 
 
 
 
――ねぇ、ジュドウ
 
――は
 
――ジュドウは、一人ぼっちなの?
 
 
ジュドウは遠くを見つめながら答えました。
 
――拙者には娘が居りました・・・そう、ちょうど姫様と同じ位の・・・
 
――へぇー、今どこに住んでるの?
 
 
 
 
 
 
      ――殺され申した
 
 
 
 
 
 
少女は言葉を失いました。
 
 
 
――戦禍に巻き込まれ・・・ずいぶんと昔の話にござる
 
――ご、ごめんさい・・・私・・私・・何も知らなくて・・・
 
――拙者が武人となったのは娘を失ったからにござりまする
 
――・・・・
 
 
 
少女の目に涙があふれました。
 
――・・・うぅ・・・ぁう・・
 
――姫様、涙をお拭きくだされ
 
ジュドウは優しく少女の涙を拭きました。
 
 
 
――姫様。ジュドウは心の狭い、愚かな男にござりました
 
――・・・
 
 
 
ジュドウは少女の目を優しく見つめながら言いました。
 
――争いからは何も生まれぬ、憎しみは大切なものを奪い去る。このことにようやく気付き申した
 
 
 
 
――・・・ジュドウ
 
――は
 
――ジュドウには私が居るわ
 
――御意
 
ジュドウは目を瞬きながら答えました。
 
 
 
――ジュドウ。今まで私達を、じぱんぐを守ってくれてありがとう。これからは私が・・・
 
ジュドウは傷だらけの顔をほころばせて言いました。
 
 
 
 
――このジュドウ、既に姫様に救われておりまする
 
――え?
 
 
 
隻眼の男は天を仰ぎました。
 
 
――次の妖魔との戦を終えたら退役いたしまする
 
――ジュドウ・・・
 
――姫様の側に仕えとう存じまする
 
――・・・
 
――なぁに、老いたれとはいえ、まだまだ斧術は若い者には遅れはとりませぬぞ
 
 
 
 
少女はジュドウに抱きつきました。
 
――ジュドウ・・・必ず・・・必ず帰ってきて・・・お願い・・・
 
 
 
 
              ――・・・・必ず姫様の下に・・・
 
 
 
  
 
 

 
 
「・・・ちゃん!」
 
 
 ――・・・
 
 
「・・・・クラちゃん!」
 
 
 ――!?
 
 
遠くを見つめていたサクラは、メリュジーヌの声で我に返りました
 
 
 
「いきなり、ぼーとしてどうしたんですの」
 
「あ・・・、ご、ごめんなさい」
 
「で、お話って何ですの?」
 
メリュジーヌはサクラの横に腰をかけました。
 
  
 
「竜騎士の村・・・にいたことがあるわよね、メリュちゃん」
 
「・・・・・!?」
動揺するメリュジーヌ。
  
 
「アルルと会ったことがあるよね・・・メリュちゃん」
サクラはメリュジーヌを真っ直ぐ見つめました。
 
 
「な・・・何を言いだすんですの・・・」
サクラの視線をそらすメリュジーヌ。
 
 
「メリュちゃん・・・アルルを助けてあげて!」
 
「!?」
 
サクラはメリュジーヌの手を取りました。 
 
「私も・・・妖魔を憎んだことがあるわ・・・」
 
メリュジーヌ「サクラちゃん・・・」
悲しそうな目でメリュジーヌはサクラを見つめました。
 
 
「でも、ある人が・・・憎しみは大切なものを奪い去るって・・・」
サクラの目には涙があふれてきました。 
 
「・・・私・・・私・・・もう・・・誰も・・・失いたくない・・・誰も・・・」
 
サクラは涙ながらにメリュジーヌに言いました。
 
「皆んな悲しいことがあった・・・でも・・・でも、偽島で仲間になった!」
 
「・・・」
  
「私はこの絆を・・・壊させない・・・どんなことがあっても!」
 
サクラはメリュジーヌへお願いしました。
 
「・・・お願い・・・妖魔の力を貸して」
  

「・・・私には無理ですわ」
  
「!?」
 
「竜騎士なんか知りませんし、アルルさんともお会いしたこともありませんわ」
 
「・・・メリュちゃん・・・」
 
「・・・お話は終わりですの?では失礼しますわ」
 
 
 
 
「・・・かたくなですね」
メリュジーヌの後姿を見ながら、陰で聞いていたさくらが言いました。
 
 
「メリュちゃんも傷ついているんだわ・・・」
サクラはポツリと言いました。
  
 
「サクラさん・・・ジュドウさんは戻ってこられたんですか」
 

 
 
 
                「ええ・・・・・・・・・小さな箱に入って・・・・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
さくらは言葉が続けることができませんでした。
  
 
 
目を真っ赤にし・・・サクラは微笑んで言いました。
  
「メリュちゃんも・・・アルルも・・・絶対救ってみせる・・絶対・・」
 

 
      ― 竜騎士の面影 ―
 
 
 
それを感じたさくらは、忘れかけていた温かい想いが込み上げてくるのを感じました――。
 

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