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【2024/04/29 04:59 】 |
手紙
 愛するサクラへ
 
変わりはないですか。貴女は頑張り屋だから無理をしないか少し心配しています。
 
帝国がじぱんぐ本土への侵攻を開始しました。お父様のお陰で、敵を国境で食い止める
ことはできたのですが、多くの犠牲を払うことになってしまいました・・・。
 
クラウンフィールドからの密使によると、東方への領土拡大を狙って帝国と妖魔国が
水面下で手を結んでいるようです。また東方諸国の中には、密かに帝国に加担している
国も在るとのこと。
じぱんぐを守るため、お父様が帝国の息がかかっていない国へ相互同盟を
呼びかけていますが状況は芳しくありません。
 
さすがに偽島まで帝国や妖魔の手が伸びることは無いと思いますが、時勢は急を告げています。
心残りはあると思いますが、じぱんぐへ帰ってくるのです。貴女独りでは危険です。
くれぐれも不用意な行動は慎んで下さい。
無事に戻ることを祈っています。
 
                    ビオラ=スズミヤ
 
 
 
「・・・ふぅ」
サクラは母からの手紙を閉じると溜息をつきました。
 
「溜息ついた数だけ、人はお腹が空くんやでー」
マリアがにニヤニヤしながら言いました。
 
「悩ミニ縁ガナクテモ、腹ガ減ッテバカリノ奴モ居ルガナー」
アルルが嫌味たっぷりに切り返しました。
 
「なにー、それ誰のこと言うてんねん」
「ハン、ココニ居ルノハ私トサクラト、後ハ誰デショウ?ッテナー」
「今日という今日はケリ付けたる、この青チビー!」
「ノゾムトコロダ、コノおっぱい女メー!」
 
 
 
「・・・・・・・・・・」
 
「チョ・・チョット待ッタ・・・。ドウシタサクラ?」
アルルはサクラの様子がおかしいのに気付きマリアを制止しました。
 
サクラの目から大粒の涙が零れ落ち、強く握り締めた手紙を濡らしていました。
 
 
「酷いこと言うて堪忍やぁ。ご主人さまぁ、泣かんといて・・・」
「・・・ううん・・・マリアのせいじゃないわ」
サクラは無理に微笑みながら、手で涙を拭いました。
 
「じぱんぐニ、何カアッタノカ?」
「ええ・・・」
アルルはサクラの手紙に目をやりました。
 
 
「・・・戦禍が・・・じぱんぐ本土まで及んできたようね」
「ナンダト?!」
「帝国が攻め込んできて・・・なんとか国境を守ることはできたようだけど
たくさんの人が犠牲になったって・・・」
「ソウカ・・・」
 
 
「じぱんぐへ帰らなきゃ」
「!?マ、待テヨ。宝玉ハドウスルンダ?」
「でも、苦しんでいる人を見過ごすことはできないわ」
「やっと皆と仲良しになれたところなのに・・・」
マリアが悲しそうにつぶやきました。
 
「マァ、今スグドウコウデキルモンジャナイシ、明日皆ニ相談・・・!?」
突如、窓の外で不穏な気配を感じ、アルルは言葉を飲み込みました。
そっと窓の外を覗き見ると、アストレアと誰かが言い争う声と剣を交える音が響き渡りました。
しばらくすると何者かの走り去る気配がし、アルルは窓から首を引っ込めました。
 
(――国境の封鎖網を強化しろ!)
(――は、どうされましたか?)
(――思わぬ輩がここに居る。迂闊であった)
 
人間の数百倍を誇る蒼竜の聴力が、この者達の会話を聞き逃すはずがありませんでした。
 
「誰かしら?」
サクラがそっとアルルへ尋ねました。
「サァナ。国境ヲ封鎖シロトカ、何トカ言ッテイタナ」
「さっきの声、アスナさんよね」
「アァ。何カガ起コリハジメテイルヨウダ」
 
 
何か、とてつもないことが、自分たちの身の回りで起こり始めている。
サクラ達は得体の知れない不安に駆られるのでした。

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