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【2024/04/29 12:11 】 |
それから
いつも独りぼっちだった。
 
 
いや、
 
 
独りぼっちの自分を演じてたんだ。
 
 
いつも誰かのせいにして、
 
 
いつも世界を斜に見下して、
 
 
悲劇の主人公を気どって。
 
 
 
 
ははは、これじゃまるで喜劇だ。
 
 
 
 
自分の寂しさを埋めたいだけ、
 
 
こんなにも愛されていたのに。
 
 
あまりの幼稚さに涙がでてくる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なんで生まれてきたんだろう。
 
 
 
 
 
 
いいや、
 
 
生まれたきた意味を作ろう。
 
 
私は独りじゃない。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
太陽が波間でキラキラ輝いている。
 
 
アルルは海の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
 
マリアが寂しそうに見つめている。
 
 
 
「姫君、スズミヤ卿へお伝えください。帝国の力の根源はマナであることを」
 
ガーム・ベル=イブリスのローブが、潮風にひるがえった。
 
 
「アルルさえ居れば、マナを封じる術を見つけることができるからして」
 
風に飛ばされそうになりながら、プロ・クーン博士は言った。
 
 
 
「いずれ、王家の一族が蜂起する時が参りましょう。それまで、アルルは人として我らと共に」
 
サクラは、ガーム・ベルを見つめた。
 
「わかりました。アルルをお願いします」
 
 
サクラの言葉に少年が振り返る。
 
潮風に揺れる蒼い髪、
 
蒼い瞳がサクラを見つめる。
 
 
「アルル=デュオス」
 
サクラは少年へ声をかけた。
 
「お別れよ」
 
「ああ」
 
蒼い瞳の少年は応えた。
 
 
 
サクラはアルルを抱きしめた。
 
アルルの唇にサクラの唇が重なる――
 
 
 
 
 
「どこにいてもずっと一緒よ」
 
「ああ、ずっと一緒だ」
 
サクラの涙が胸に滲むのを感じた。
 
 
 
 
「行こう。アルル」
 
ガーム・ベルはローブの襟を立てながら声をかけた。
 
アルルはサクラの肩に手を添え、ゆっくり身体を離した。
 
 
「さよならは言わないよ」
 
少年が右手を水平に上げると、蒼い光に包まれブルードラゴンの姿に変わった。
 
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
汽笛を鳴らしながら、船は偽島から離れてゆく。
 
 
 
 ―― 宝玉が集まっていたら世界を救えただろうか。
 
 
船首に手をかけ、サクラは空を見上げた。
 
 
 ―― ううん、もういい。
 
 
 
「クオォォォーーーーン」
 
ガーム・ベル達を乗せたブルードラゴンが、真っ青な空を大きく旋回しながらシルグムントへ飛び去った。
 
 
 
 ―― 仲間を信じよう。きっと奇跡を起こせる。
 
 
 
「あ、アルマさん達やぁ、ご主人さまぁ~」
 
マリアが指をさす船上でアルテリア達が手を振っていた。
 
 
「ありがとーう!」
 
サクラは太陽のような笑顔で手を振り返した。
 
 
 
やわらかな風が、いつまでもサクラ達を包み込む。
 
 
いつまでも、
 
 
いつまでも。

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